講座内容
3Dモデル決定/スライス設定/フロントエンド操作/3Dプリント開始/3Dプリント終了
3Dプリンタを実際に作りながら考えるという刺激的なイベント「横濱3Dプリンタ実践ゼミ(全6回)」。最終回は、場所を北仲BRICKに移して、参加者同士で組み立てたデルタ型3Dプリンタを使ってプリントアウトをおこなう。講師の増田恒夫さん(SHC設計代表)は、9台のマシンを前に「歴史的な場所でこの最終回、これは意義あるよ」と感慨深げだ。
また、北仲BRICKを拠点に、横浜からFab社会の可能性を発信する慶應義塾大学SFC准教授で、Fab9実行委員長の田中浩也先生もゲスト参加。田中先生からは、デジタル工作機器の普及やインターネットにより可能となっているものづくりの新しい潮流や横浜での活動について伺うことができた。
デルタのアームがしなやかに舞う
出力するオブジェクトは田中先生がプロデュース。5台のマシンを使って個々に異なる部位をプリントして、最後に連結するストーリーだ。いったい何が出来上がるのか? オブジェクトが出来上がっていく様子を見てみよう!
一方、ゼミ参加者も残りのマシンを使って、これまでの学習成果を活かして、3Dデータの設計から操作・出力までトライする。
田中先生プロデュースのオブジェクトは、まさかのレインボーヴィーナス(ミロの全体像)だった。不測の事態に備えて、前日に全ての予備出力を済ませていた増田さんも安堵の様子だ。そしてゼミ参加者も思い思いの出力にチャレンジし、試作品を持ち帰ることができたようだ。
FabCity横浜の可能性を描く
こうしてデルタ型3Dプリンタが競演する歴史的なイベントは幕を閉じた。そして「横濱3Dプリンタ実践ゼミ」の参加者は、増田さんとIDECの呼びかけに応じて、これからも緩やかなネットワークを結びながら、デルタ型3Dプリンタの改良に向けての活動を続けていくことだろう。
ゲスト参加された田中先生からゼミの参加者に向けて、このゼミの意義が話された。先生の研究室では、Fab9で生まれたネットワークを活かして、2013年秋から「FabCity横浜の可能性を描く」セッションを開催してきたという。これは横浜の創造活動をさらに高めたいと思う企業、NPO、団体、個人などが、横浜の現状やデジタルファブリケーション技術の進展などさまざまな角度から検討を加えて、2020年横浜の未来図を描く活動だ。この活動は「2020 FabCity横浜をつくるためのガイドブック*」という冊子にまとめられ、2014年春から具体的な計画作りに入るという。田中先生は「自分のために作るという自産自消を高めていくのがFabの思想。そこには、ものづくりは日々の『楽しみ (Fabulous)』であり、そんなスタイルを生き方、暮らし方へと転じてしまおうという意味もある。誰もが自分のためにものづくりをおこない、社会のためにその結果の一部を役立てる。20世紀型の『購入と所有』で満たしていた欲望を、『創作と交流』で満ちるものへと部分的に置き換えていくのが、Fab社会の目指す世界像。肝心なのは、誰かがこうしたニーズや動きを融通し、結びつけ合わせ、プロジェクトとして生み出すエンジンになることである」という。
田中先生からは、ゼミへの参加で終わらせるのではなく、これからこの集まりを育て、文化と産業を発展させていくことの重要性を示唆戴いた。「(仮称)横浜デルタネットワーク」も横浜を拠点に横浜の持つ創造性を活かして、創作と交流のプロジェクトを発信する集まりになっていけたらいい。
* 2020FabCity横浜をつくるためのガイドブック(PDF版)
ありがとうございました。長いゼミでしたね(笑)。こちらも思考しながら歩んだ3か月でした。
最初は3台作るという話でしたが8台になった。これは焦った(笑)。でも得るものが多かったです。機械にはバラつきがある。そこをどう補正するか。実は昨日の夜まで悩んだんです。追い詰められました。
気候が変わると3Dの造形物が微妙に変わります。1月、2月、3月で異なる。でもね打ち明けますが、昨日初めてきれいに出力する方法が分かったんです(ニヤリ)。これ記事にしないでね、はまリンクさん。
さて皆さん、これからも緩やかにつながっていきましょう。そして横浜から、一番速く、一番精度の高いデルタ型3Dプリンタを作って発信していきましょう!
取材後記 増田さんの打ち明け話 ~美しく出力するための必殺技~
ホットエンドで溶かしたフィラメントをガラス面に出力していくと、オブジェクトが常温に戻った際にどうしても底面に反りが出てしまう。この反りを防ぎ、底面がフラットになるように、ガラス面に粘着性のある物質を塗布するのがよいが何を塗ればよいのか。
増田さんが最初に試したのがでんぷん糊。子ども用のロングセラー商品だ。次にスティックのり、木工用ボンドも試した。医療品や美容品に使われるアセトンもチャレンジしたがきれいに仕上がらない。
そして最後に到達したのが、なんとヘアスプレーのケ●プ。歴々の若手女優がCM出演したロングセラー商品だ。
このケ●プ、なんでも、糊の粒子が細かく均等に広がり、アルコール成分はきれいに蒸発してくれるのがいいと増田さん。爆笑するゼミ参加者を前に増田さんは「この缶に大きくこう書いてあるんです」
「3Dエクストラキープ」
「必要は発明の母」ってことですね。3Dプリンタにケ●プを使う。大きな発明ですよ増田さん!
本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。