ヨコハマトリエンナーレ2014 参戦記 その2

はまリンクが本邦一の現代アートイベントに初参加。
横浜ものづくり企業とのコラボレーションを企画プロデュース、そして製作!

第2話 試作、検査。そして納品へ

はまリンクは横浜のものづくりを伝えるサイトだが、実際にものづくりをしたことはない。
そんなあまちゃんが恐れ多くも横浜トリエンナーレのスーベニア(記念品・おみやげ)作って販売する、という絵空事(暴挙)を実現するために、ものごとはシンプルに進める必要があった。商品もデザインも素材も工程も価格も、すべてシンプルに。スーベニアとして何が一番シンプルか。
はまリンクが出した答えは、コースターだった。呆れるほどシンプルな発想だ。

1年前にはまリンクの巻頭を飾った「ものづくりインタビュー」。この特別取材でお邪魔した株式会社横浜ベイサイドネットの西川さんに、コースターというネタだけもって、まずは相談、というか意気込みを聞いてもらった。

「ヨコトリでコースター作りたいんですけど」

Paper-Wood

横浜ベイサイドはオリジナルオーディオ機器を製作する注目のアルチザン企業だ。すると「これなんか面白い素材だと思うよ」と積み木ほどの木材を紹介してくれた。
良いも悪いもない、西川さんはすでにデザインに話を進めようとしている。

滝澤ベニヤ株式会社のPaper-Woodシリーズは、カラフルなストライプが印象的な合板だ。シナ材に挟まれているのは和紙。このストライプを全面にだすデザインに可能性を感じた。厚さ30mmある小口をコースターの表面に利用にするには、一枚板ではつくれない。Paper-Woodをうすくカットして、別のシナ合板と接着させないといけない。工程がひとつ余計に必要となる。
コースター全体の大きさや厚さ、接着面の広さなど、機能、デザイン、耐久性、価格など様々な視点から検証し、試作などを経た結果、コースターのサイズは、900mm×900mm×9mmに決まった。ストライプの色は夏から秋にかけてのイベントということで爽やかなブルー×グリーン。

coaster_blueprint

ヨコトリのロゴは最低20mmの大きさを確保することが条件だった。シンプルで軽快なデザインのロゴをシナ合板に付けないといけない。そこでFablab kannaiのレザーカッターを使い表面を焼きつけることにした。レザーカッターの面白さは慶応義塾大学田中浩也研究室の作品を見て十分感じていた。
機器を使用するために、会員になり講習を受ける。Fablab kannaiディレクターの増田さんは、3Dプリンタ実践ゼミでおなじみ。ニコニコと笑いながら「いったいどうしたのよ」と温かい眼差しを送ってくれる。12枚並べて一気に刻印が完了する。

coaster_sample2 coaster_with_laser_cutter

問題は値決めだ。販売委託料も含めた価格設定をどこにするか。掛かった原価、ロス率、損益分岐点の検証とともに、何枚セットとするか。ミュージアムショップにあるグッズやコースターの価格をリサーチして回る。それこそコースターなどは、100円ショップにもあるし、おしゃれなライフスタイルショップやセレクトショップには1枚2,000円以上もする代物もある。
要は、ものがたりが重要なのだ。そこで、パッケージに「はまリンク」「横浜ベイサイドネット」「Fablab kannai」のコラボレートであることをしっかり書き込み、「横浜のものづくりを応援する」というメッセージを添えることにした。

価格は3枚セットで800円(税込)に決定。
パッケージも茶色の薄紙にシュロ縄というシンプル極まりないものだ。

スピーカー部材で作った木製コースター

『スピーカー部材で作った木製コースターセット』これが商品名である。
検査のために、3セット納品しなくてはいけない。はまリンクは、ニス、刷毛、紙ヤスリを買いにセキチューみなとみらい店に駆け込んだ。そう、最後の仕上げは自ら行うのである。
まず#320の紙ヤスリで毛羽をとり、ニスを塗る。乾いたら#400でさらにヤスる。そして二度塗り。するとコースターの表面に光沢が現れる。検査に合格し、販売委託先から連絡が入る。

「20セット納品して下さい」

さあ、暑い夏が始まった。横浜トリエンナーレ開催7日前のことであった。